顔厚忸怩

ゴツゴツとしたコンクリート、犬小屋、冷たい土。
犬はとても温かい。唾液が鼓動が間違いなく生きていると教えてくれる。獣臭さですら唯一の味方だった。子供1匹吠えたところで閉鎖された私の街ではよその事だからと何もわからないふりを。港は潮の匂いで溢れていていつも灰色をしていた。大きな声も身体に痣が出来るのも心無い言葉を言われるのも嫌なのでガラクタだらけの海辺で本を読む。やはりここも灰色なのだ。携帯電話の通知は切らねば絶対に安全な気持ちにはなれない、数時間後に訪れる地獄など忘れる他ないのだ。日々の積み重ね、産まれたことが罪だと言われる。つかの間の快楽のせいだとその頃には理解していたのに。言葉を制裁として与えられる。受精して着床してごめんなさい、そんな気味の悪いことを毎日思い続ける。またこっそり犬小屋へ。犬が私から流れる液体全てを舐めとってきれいにしてくれる。この子も私が連れてきたせいでこんなコンクリートで生きることしか出来ないのかと思うととめどなく排出されるのであった。大切にしてあげられなかった。ごめんなさい。あの子には私しかいなくて私が世界の全てだったはずなのにあんなところに置いてきてしまった。最後だって私に抱きしめて欲しかったはずなのに。冷たい土になってしまった。我が家の庭、我が?既にそうじゃないのかもしれない。私を本当に愛してくれたのはきっと動物達だけだった。なんにもしてあげられなかった。昨年久々に帰省したとき土をかき集めて柄にもなく大きな声をだして動けなくなってしまった。冬の地元は全てが灰色で出来れば二度と戻りたくないのだ。優しい人間に囲まれて育った子供は灰色に見えないのか、それだけとても気になります。

ちゃんと色づいて見えるみたいです。よかった。